第11回CO2助成監督3名が決定し、それぞれ制作に向けて動き出しています。今年CO2に挑むのはどんな個性の持ち主か!?助成監督たちのインタビューをお届けします。
【黒田将史 クロダマサフミ】
1993年生まれ、大阪府出身、大阪市在住。大阪市立咲くやこの花高等学校演劇科中退後、吉本の養成所NSCへ入学。NSC卒業後1年間芸人活動するが、すぐに諦め独学で映画の道へ。初監督作品『おとなになりたくて』が、したまちコメディ大賞2013でグランプリと観客賞を史上最年少受賞。MOOSIC LAB 2014参加作品『QOQ』は同コンペで準グランプリと主演のケツが最優秀男優賞を受賞。
★新人公募枠での選出
企画名『バカドロン(仮)』
リサイクル業者の辰男とボンは、回収に訪れた客の家で金品をくすねては小遣い稼ぎをしていたが、客の家での窃盗がバレてクビになり、辰男の姉がいる大阪へと向かう。そこで中国人の娘に辰男は一目惚れするが、彼女はある男を探すため日本に来たと言う。馬鹿な二人が織りなす道中記。
コンビ解散と山下敦弘監督作品との出会い
NSCを卒業後、よしもとでコンビ芸人として活動していた黒田さん。一生芸人でやっていくつもりだったが、相方の思いは違っていた。コンビで生み出すお笑いの限界と、遅刻が多いなどどこかだらしない黒田さんに対する不信感。
「相方に愛想を尽かされて。僕はその相方が1番面白いと思っていたから、“解散”と言われて頭真っ白です。人生終わったと」
実家に帰るもやることがなく、たまたま山下敦弘監督の『不詳の人』のDVDをレンタルした黒田さんは山本剛史さんの声の出し方、顔、動きに圧倒された。
「相方より面白い人見つけたって(笑)」
最初は役者を目指そうとした黒田さんだったが、興味は役者より監督に移る。若手芸人として2分や1分のショートネタで勝負してきた。映画は何十分にも及ぶ長いネタを何ヶ月もかけて作り、たくさんのスタッフと一緒に出来る面白さがある。
まずは映画の勉強のために、山下敦弘監督に会おうと役者のワークショップに参加した。
「山下さんの演出は面白かったですね。人を動かすとはこういうことなんだ。耳元で演出をつけていく感じで。山下さんぽいなと思いました」
ワークショップで学んだことは自分の演出に生かされるか?
「どうでしょう。多少影響を受けているところはあると思う。一回自分で考えて“こんな風にやってみてください”って役者さんに指示します」
『おとなになりたくて』で観客の反応に驚く
今まで撮った作品は世に出してない処女作も含めると5本。ワークショップや独学の1年間を過ごし、作ったのが『おとなになりたくて』。中学生を主人公とし黒田さん自身も準主演で出演している。したまちコメディ大賞2013でグランプリと観客賞を史上最年少受賞した。
「分かり易い、可愛らしい映画です。大人になりたくて見栄を張って悪いことをやろうとするが出来ない。それがわかってバンドを組む話」
したまちコメディ大賞ではキャパ千人ほどの会場の大スクリーンで上映されるのに驚いたが、観客の反応にもっと驚いた。
「こんなに受けるんやと。多分一生これやるやろなと思いました」
その後参加したMOOSIC LAB 2014にて、さえないフォークデュオを描いた『QOQ』は準グランプリを受賞し、主演のケツが最優秀男優賞に選ばれた。
助成金の範囲内でいかに人を楽しませる映画を作るか?への挑戦!
CO2については監督の登竜門的な存在として知っていたと言う黒田さん。今まではギャラなし、ゲリラ撮影上等、脚本はあるが役者に見せずにその場で説明と、自由に映画を作ってきた。
「やっとちゃんと映画と向き合える機会やなと思っています。CO2でしっかりと映画が作れて、今までの自分が考えたやり方も取り入れてできたら強くなれる気がします」
黒田さんは、今回の企画は「挑戦」だと語る。『おとなになりたくて』は約4万円、『QOQ』は約30万円で制作した。助成金の60万円は縛りがあるという感覚ではなく、その中でいかに人を楽しませる面白い映画を作るか。
「この企画には自分の人生も多少なり入っていると思うんです。この前家賃払えなくて家を追い出されたんですけど、それでも俺めっちゃ工夫して楽しく生きてるなって(笑)」
『QOQ』での黒田さんは監督・録音・制作。という役回り。カメラマンは1人で、照明も兼任。カメラに映ってないところにいたのは2人だけというミニマムな現場だった。スタッフワークの不安はないのか?
「何も怖くないです。ただスタッフ集めは怖いですけど(笑)。僕は1本目も役者として出てるんで監督だけってやったことがないんです。かなり楽しみですね」
黒田さんにCO2をきっかけにした目標を聞いてみると、
「絶対に人に受ける映画を作ること。笑わせるのが1番。“楽しかったな、また観たい”“いい映画観たな”と思わせたいですね。
自分のためよりお客さんを楽しませたい。楽しんでもらったら気持ち良くなるんで、結局自分のためでもあるでしょうけど、映画は娯楽なので。配給の直井さんと相談しつつ劇場公開までは必ず持っていきたいし、海外の映画祭なども出してみたいです。どれだけこれを面白いと思ってくれるのか。まずはしっかりやり切って、考えている時より面白いものが出来たらなと思います」
最後に1番興味あることを聞いてみると、映画以外でもいいですか?と、屈託なくこんな答えが返ってきた。
「オリックス優勝するんかなということ(笑)。関西ダービーってなかったんで。阪神ファンなんですけど(笑)」
ごひいきチームの勝敗だけでなくシーンの盛り上がりを楽しみにするところが、作品作りの感覚に繋がっているように感じた。
元芸人の感性とサービス精神を活かし、黒田さんがCO2にてどんな作品を作り上げるのか期待したい。