2013年3月29日

第9回CO2授賞式/助成作品総評

3/18(日)第8回大阪アジアン映画祭 インディ・フォーラム部門の中で開催された第9回CO2授賞式は、選考委員・万田邦敏監督の総評から始まりました。
グランプリにあたる「CO2作品賞」と「CO2俳優賞」に該当がなかったという厳しい結果が出たのは何故であったのか、また該当があった「Panasonic技術賞」と「CO2選考委員特別賞」についても賞を渡すというだけでなく伝えなければならないことがあったためです。
「僕らは何故映画を作るのか」その問いから総評は始まりました。

「自分たちの作りたいものを作る」そこから始まった映画作りへの欲求は、他者と関わっていくことによって自分以外の人間が世界に存在することを理解し、他者である観客が自分の作品を観るのだという発見を経て、作品が「自己完結で終わってはいけない」ということに気付き始める。
そこで、最初に抱いていた欲求に、自分と同じ感覚や価値観を持っているわけではない観客に何を感じてもらうか、何を考えてもらうのか、という視点が加わっていく。
自己表現と、観客をどうやって巻き込むのかという、相対するもののせめぎ合いが常にあるのが映画作りであり、そのせめぎ合いを、自分が映画表現していく上での問題として、どれだけ意識化していくのかが映画製作を続けていく者の課題ではないか。

鈴木洋平監督『丸』
丸いものを見たら人の体が止まってしまうというアイデアが結局のところ展開せず、観客を巻き込むまでに至らなかった。 アイデアは発端であり掴みでしかない。掴めたところで、映画を観ている時間観客を本気にさせるのは、アイデアからの展開である。

山田剛志監督『GET BACK NIGHT』
過去に因縁を持った男女4人という設定があり、お膳立ては出来ているが、これについても展開がなく、作り手がまだそこに気が向いていないと思われる。 もっと画作りや、役者をどう動かすか、監督の持っているイメージから何をどう飛躍させるかについて力を尽くせたのではないか。

野口雄也監督『壁の中の子供達』
壁の向こうにクローンの町があるという設定を、フィクション映画の中でどうやってリアリティを持たせるのかというアイデアがごっそり抜けていた。 壁やクローンという存在について、大人たち、子供たちがそれぞれどのように捉えているかなど、そこを放っておくのは悪しきご都合主義と言わざるを得ない。 ただある瞬間、あの年代の子供たち特有の危うさを感じ取れる場面がいくつかあった。しかし、それが作品賞に至るまでの材料には成り得なかった。

今回とても短い期間、過酷なスケジュールの中で、3作品ともが完成にまで至ったことについては評価に値し、その中でも『壁の中の子供達』については、ロケ地探しなど制作面での努力が感じられたことに対して「CO2選考委員特別賞」が贈られました。 同作品の撮影監督である高木風太さんに贈られた「Panasonic技術賞」は、これまでCO2の作品に多数参加し、インディーズからプロのカメラマンとしての道を歩み始めた高木さんのCO2への貢献と、作り手の育成という流れを繋いでいけるように期待しての贈与となりました。

受賞結果はこちら

≪第9回CO2助成監督選考について≫
第9回CO2助成監督選考では、エントリーシートでの企画選考、参考作品(応募者の前監督作品)の提出、面談においてのプレゼン、脚本選考を経て、今回撮りたいという企画の題材・テーマを監督たちがどう認識し、捉えて、それをどんな方法で映像に還元するのか、どう物語化するビジョンを持っているのかに着目しました。それが小さな種であったとしても、そこに養分がたっぷりあるのか定かではなくとも、映画として完成したとき花開く“可能性”のあるもの、またそう”期待”したいものを選出しました。


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