2011年12月30日

レポート12/11(日)青山真治監督のCO2特別映画講座(1)

12/11(日)のCO2特別映画講座は青山真治監督をお迎えしました。

2000年『EUREKA ユリイカ』で第53回カンヌ国際映画祭国際批評家連盟賞とエキュメニック賞をW受賞し、映画監督として国際的に活躍。2011年『東京公園』で第64回ロカルノ国際映画祭で金豹賞審査員特別賞を受賞。
小説家、舞台演出家としても活躍する青山監督。

一緒に登壇したのは昨年のCO2助成監督である大江崇允監督(『適切な距離』)と富岡CO2事務局長です。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
『東京公園』における若手の起用について
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
富岡:新作『東京公園』では、カメラがベテランの田村正毅さんから若手の月永雄太さんになっています。積極的にインディペンデント出身の若手をどんどん登用していますが、若手の動きをどういう風に見ていますか。

青山:『サッド ヴァケイション』から4年ぶりっていうこともあって、今までの関係を一旦クリアにして、ただ録音菊池信之さん・美術清水剛さんは引き続き入ってもらいました。清水さんは僕が助監督についた『地獄の警備員』から最初の2.3作以外は『冷たい血』以来ずっと一緒にやっています。

若手との付き合い始めは縁ですね。月永のことを知ったのは冨永 昌敬さんが日大の学生時代に撮った作品『VICUNAS/ビクーニャ』を水戸短編映像祭で観て。このカメラマン凄いなと思ったのが最初で。富永さんにも惹かれたんですがカメラがとにかく良かった。そこから月永にずっと目をつけていたんです。シナリオを書いた合田典彦は元々学生です。若手だからということではなく、審査員や講師をすることで実力を知った上で付き合いが始まっていくパターンです。

CO2出身の『天使突抜六丁目』の山田雅史さんは、その作品の抜粋した映像でミュージックビデオを彼らが作って、ショートショートフィルムフェスティバルで青山賞に選んだんです。そういう付き合いがあって初めて作品を観るってことはあります。逆にそんな機会がないと観ないですね。

富岡:それは何か意図がありそうですね

青山:同世代に生きてる人間として若手もベテランも全部ですが影響を受けたくない。黒沢清、万田邦敏といったすでに受けてる人にはしょうがないんですが、これ以上は他に人を自分に近づけたくないってスタンスなんですよ。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
反逆精神の世代間格差
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
富岡:大江さんは元々演劇畑ですが、青山真治監督の作品はどういうきっかけで観始めたんですか。

大江:『ユリイカ』が世界的に評価を受けたことからですね。演劇の中でも演劇しか見ない人間と映画が好きでやっている人間に分かれます。僕はどちらかというと映画が好きだったので、賞を取った作品はチェックするようにしてます。

富岡:20代後半から30代は、黒沢清よりは青山真治で映画に係り出したって人が実は結構多い。映画以外の部分でも活躍されているので刺激を受るというのもありますね。黒沢清で盛り上がっているのはちょっと上の世代が多い。ちょっと違うかもしれないですけど、ハリウッド映画でジョン・フォードやハワード・ホークスが1つの型を作った世代がいて、上の世代がやったことに対して反逆心を見せていくニコラス・レイといった流れがあります。青山さんの世代で黒沢さんの影響を受けながら消えていった人は大量にいますが、青山さんの場合、ひとつ鍵だと思うのは黒沢さんの上の世代とも繋がりつつある種の反逆心も見え隠れしている。

青山:反逆しているかは映画のパッケージを観れば類推できます。黒沢さんはあからさまに先行の世代に対してアンチテーゼをぶつけていましたが、そういう意味では今の若い人達はあまり喧嘩しようって気はないように思います。いわいるオーソドックスに作っているものしか見たことがない。反逆の反逆は保守になるってくらい、ごく当たり前のショットとつなぎがあるだけで。それをすることで上の世代に反逆してる訳でもないよねって。

富岡:青山さんのスタンスはそれとは違う訳で、CO2や他の若い人の作品でもそれは感じますね。大江さんは青山さんの作品を観てどうですか。

大江:『東京公園』を観て、これはやらないで欲しい。若手に譲ってよって思いましたが、後から『サッド ヴァケイション』を観返したときに青山さんは意外とすんなりこっちの方向に行ったんじゃないかと思ってました。反逆の話で言うと、新しいものを作るには革命の時代じゃなく、ハッキングの時代なんじゃないかと思っています。カウンターパンチを食らわしてやろうって言うんじゃなく見せる相手も対象も違う訳ですから。それなら侵食してやろうかなって感覚で。

青山:僕も実はそうなんだよ。なんで田村正毅ってカメラマンを使うかってことを含めてなんですけど、先行する名前として相米慎二があって。蓮見重彦が『翔んだカップル』の時に「溝口健二とも加藤泰とも違う固定長廻しというものを実現した」って文章を書いた訳です。相米とは違う長廻しがこの世で可能かってことをしつこく食い下がって考えたのが『Helpless』で、その進化型が『ユリイカ』って作品だったんですね。僕の中では侵食してく感じ。くっついていくけど違う所から見る。一種の領土拡大のような感覚で始めたというのは大江さんと似たようなところがありますね。


カテゴリー
最近の投稿
アーカイブ