12/9(金)に開催した山田雅史監督のCO2特別映画講座。後半では昨年のCO2助成監督リム・カーワイ監督も参戦してのトークとなりました。
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山田監督の作家性・シュールリアリズムの影響について
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富岡:山田さんは元々絵を描いておられたので、シュールリアリズムの影響を受けていて、作品もデビッド・リンチといったジャンルの傾向にありますね。
山田:映画を撮り始めたのは『ツインピークス』の影響ですね。映像でこんなことが出来るんだっていうので。映画、ドラマというよりは映像を使って何かを作るっていうところに興味を持って始めました。
富岡:最初に作った8ミリの作品では、ご本人がどれだけ意識してたかは分かりませんが、海岸のシーンなんかは『アンダルシアの犬』の雰囲気があったり。『The record of the cry from the deep sea』は海外の映画祭では結構上映したんですけど、ドキュメンタリーではないけど奇妙な映画で。
山田:マグロ男が人類に復讐を誓うって話です。
富岡:『堤防は洪水を待っている』はその後くらいですね。1本『RIDDLE』っていう長編がありましたけど、脚本がしっかりあってというのは『堤防…』が始めてくらいですね。
山田:原案を元に改めて脚本として書いたんですけど、脚本というよりは役者に渡すくらいの画コンテに近い形です。現場では自分で画コンテを書いて撮影していった感じです。
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山田監督&リム監督トーク★絵を描くように映画を撮っていく
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リム:『堤防は洪水を待っている』は傑作だと思います。1つ1つのショットが雰囲気だけじゃなく、色々な物語を語る力がありました。しかもこれスタンダードサイズですねよ。空間の中で物語を語っている力が、『天使突抜六丁目』では違う形になっていました。こちらは物語がちゃんとあって、それはそれで面白いんですが。2本が共通しているのは、日常の中で繰り返されているストレスが溜まって、あるきっかけで爆発する。
山田:『天使突抜六丁目』が今東京で公開中で黒沢清監督とトークをした時に、黒沢さんはCO2の審査員で、労働者の映画をこの監督は撮っていくんだろうなって。自分もずっと労働者をやっていて、どの仕事もそういうところはあるんですけど、例えばバイトしていた警備員って仕事じゃないような仕事が一杯あるんです。それこそ判子で押したような毎日で。工事現場の先にロボットが置いてあって電動で動くんですけど、その横に立ってそれの電気が切れないか見守るとか(会場笑)。夜勤ですから朝までじっと見てるわけです。昔で言うと「きつい・汚い・低賃金」って言われるような仕事で、働いているのか働いてないのか分からない状態が毎日繰り返される、もやっとした感じ。俺は何のためにここにいるんだ?みたいな思いで、『堤防は洪水を待っている』の主人公は虚無感に襲われる。職種は違うんですけど、『天使突抜六丁目』でもどんどん人間性を失っていくって言うのが共通してますね。
リム:そうですね。『天使突抜六丁目』では工事現場で働いていてヘルメットかぶってますし、『堤防は洪水を待っている』では顔が見えない溶接のマスクをかぶってます。
山田:そういう人を描きたい。おしゃれな人は描きたくないですね(笑)
リム:おしゃれではないところが僕は凄く好きですね。部屋のシーンで壁にカビが生えていたり。『天使突抜六丁目』でも車が一杯壊れているところで話しているとか。
山田:廃墟が好きなのでロケハンではそういう所ばかり選んでますね。『堤防…』を観てもらって分かるとおり、そんなに動き回る映画ではないんです。二人が立っていて見つめ合って話す。人物のお芝居だけを撮りたいのではなく、そこを含めた空間を撮りたいんです。画面をどう構成するか。まさに絵を描く作業に近いと思います。
リム:『天使突抜六丁目』が面白いのは主人公が急に●●●●に変わってしまう。説明なしにそうなってしまうのがシュールリアリズムでなくては出来ないと思う。『天使…』は商業映画ですが、インディーズ精神に溢れていて凄い大胆なことをやっていると思います。
山田:シマフィルムが出資してるんですけど、プロデューサーの志摩さんからは東京の商業映画とは全然違うオリジナルでやるっていうのは意見が一致していたんです。自分のやりたいことをとことんやった作品になっていると思います!