2011年12月16日

レポート12/9(金)山田雅史監督のCO2特別映画講座(1)

12/9(金)のCO2特別映画講座は『天使突抜六丁目』の関西公開を12/17(土)に控えた山田雅史監督をお迎えしました。

第1回CO2助成作品『堤防は洪水を待っている』を創り上げた山田監督。拠点を東京に移し、2008年よりホラー商業作品『ほんとうにあった怖い話』シリーズを手掛け、2009年には『ひとりかくれんぼ劇場版』が全国ロードショー公開されています。

富岡CO2事務局長とのトークは、『天使突抜六丁目』の成り立ちから始まりました。

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誰も知らない京都に出逢う“京都連続シリーズ”第2弾『天使突抜六丁目』

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富岡:去年公開された柴田剛監督の『堀川中立売』もシマフィルムの制作なんですが、シリーズなんですね。

山田:京都の面白い地名や通り名をタイトルにして、あとは監督のやりたい自由な作品を作っていいという、京都連続シリーズの2本目です。

富岡:山田さんは今回どういう切り口で作られたんですか。

山田:以前からシマフィルムの志摩敏樹さんに脚本は渡していたんですね。「僕もやらせてください!」って。僕は京都出身なんですけど、映画に使えそうな地名や通り名を探して、その中に天使突抜っていう名前を見つけたんです。京都の下京区にあって割とJR京都駅に近い、京都の中心にあるんですよ。実際の天使突抜は1丁目から4丁目まであるんです。ファンタジーな架空の世界なんで、実際にはない6丁目を作ってみました。

富岡:京都の町で天使って付くのは珍しいんじゃない?古い町名ではないのかな。天使ってキリスト教の世界観だし。

山田:古いですね。撮影前に色々廻って調べたんですが、神社を突抜けて作った道。その神社が「天使」と書いて「てんしんの社」って別名があるんです。

富岡:天使ってエンジェルじゃないんだ。仏教の世界でも天の使いって意味なんですね。

山田:少彦名命(スクナヒコナノミコト)っていう神様が祭られていて一寸法師のモデルになった神様なんですけど、そこを突抜けて作った道だから天使突抜。撮影は2年前で、主に舞鶴で撮って4シーンほど実際の天使突抜通りで撮りました。

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CO2がつなぐスタッフ、役者の縁

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『天使突抜六丁目』公式サイト

山田:ストーリーは、借金取りに追われた主人公が迷い込んだ街が天使突抜六丁目で、変な人々が住み着いているんですけど、自分で天使で羽が生えるんだって信じている女の子と出会って、町から逃げ出そうとする話なんです。

富岡:主演の女の子は瀬戸夏実さん。佐藤央監督の『シャーリーの転落人生』(08年)、冨永昌敬監督の『パンドラの匣』(09年)』、最近では園子温監督作品『冷たい熱帯魚』(10年)に出演してましたね。

山田:何人か候補はあったんですが、富岡さんに紹介していただいて観た作品がきっかけです。その作品でも変わった方言だったんですけど、今回も関西弁の女の子にしたかったんです。実際は福島の出身で、雰囲気のある役者さんです。

富岡:役者さんでは、柄本明さんの他にデカルコ・マリィさんが出演されていて、関西で活躍されている方ですね。

山田:板倉善之監督の『にくめ、ハレルヤ!』(第2回CO2助成作品)に出演されたのを観て、面白い方だなぁと思って、PFFの中で流すCMに刑事役で出ていただいたのが最初ですね。主演の真鍋 拓さんはオーディションに来ていただいて選んだ方です。

富岡:スタッフは、カメラの笠真吾さんはあなたの出身校のビジュアルアーツ専門学校の後輩で、これから観て頂く『堤防は洪水を待っている』で撮影を手掛けたのが一番最初でしたね

山田:当時学生で、僕がCO2で撮ることになって、学校で今一番優秀な奴ってことで来てくれたのが笠さんでした。

富岡:その後あなたも笠さんも東京へ行って、あなたの作品は大体笠さんが撮ってるんですね。『天使突抜六丁目』の録音の弥栄裕樹さんはCO2の最初のインターンで、共同脚本の宮本武史さんもCO2つながり。今年のCO2で常本琢招監督の制作担当が『天使突抜六丁目』ラインプロデューサーの菊池正和さんです。

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ほぼ助成金だけで撮り上げた『堤防は洪水を待っている』

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富岡:この作品は第1回目のCO2で4日か5日で撮りましたよね。

山田:僕らが一番早かったですよね。

富岡:当時は助成金30万円だったんですけど、山田さんは、最初から予算がないから30万でしか撮りませんというスタンスで。他の監督の唐津さんなんかは120?130万くらい掛けたし、他の人もそれなりに掛けたんですけど、当時は長編でなくても30分以上であればいいという条件だったんですね。最初30分で企画して50分くらいの作品になった訳ですが、1円たりとも余分なお金はないから助成金30万円だけで、4日で撮るという条件の下で考えた企画でしたね。

山田:原案は別の方が書いたものがありまして。

富岡:『ホッテントットエプロン‐スケッチ‐』主演の阿久根裕子さんが関西に居たときに山田さんと一緒にやっていた同級生と8ミリを撮りかけていたものですね。結局完成せずに阿久根さんは上京し、アイドルとしてドラマに主演されたりしてます。完成してない原案だけが残っていて、それを元に企画を立てて4日で撮ることにした訳です。ロケは、八尾の工場1日、山田さんの京都の実家の近く2日くらい?

山田:クライマックスの堤防は最後1日です。長廻しで夕日を狙ってという難しい撮影になったので、あのシーンだけで1日使いましたね。

富岡:骨格を作って最後の長廻しでどれだけ持っていけるのかって挑戦したような作品でしたね。

山田:「みんな頑張った!」って打ち上げ後にべろべろの時に制作部から「すみません、実は事故ったんです」って聞いて。「えー!!!」って(笑)。

富岡:堤防での撮影の後にちょっと車の後ろをぶつけて、その分赤字が出たくらいですよね。CO2の作品は今では長編が多くてみなさん結構お金をかけて、150万円とか200万円くらいで、撮影15日くらいですけど、山田さんの場合は4日で30万円。最初からそのアイディアを温めていれば十分やり切れるってことですよね。


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