2011年11月17日

レポート10/9(日)【CO2特別映画講座/黒沢清監督】(2)

中国自主制作映画の状況

話は中国の映画制作の状況に及びました。以前の中国では、北京アカデミーを卒業するとそのまま中国国内のスタジオに助監督として入り、何年か経って監督になるというのが通常のパターン。第五世代のチェン・カイコー監督やチャン・イーモウ監督の世代あたりまでがそういう状況でした。

リム「10数年前にチャン・ユアン監督が撮った『媽媽(ママ)』(90)は映画祭でしか上映されてないんですけど、中国では最初の自主制作映画と言われています。それに影響されてジャ・ジャンクー監督、ワン・シャオシュアイ監督といった当時の映画学校の生徒や、彼より上の世代も自主制作映画に影響されて勝手に映画を撮り始めたんです」

黒沢「中国では、自主制作映画で評判になった人がその後大きな商業作品と撮るってことはあるんですか」

リム「実際そうなっていますね。みんな商業映画をやりたいんですけど、中々出来る状況ではないので、最初は自主映画を撮るんですね。それを映画祭に出して、中国の今の現状を反映するものを撮れば映画祭にも出されるし、ある程度の評価も得られるんです。それを確信犯的にやっている人が多い」

 

映画作家としての道

富岡「中国の監督たちはジャ・ジャンクーみたいに最終的には商業映画の方へ行きたいと思っている?それとも黒沢さんが言ったみたいにヨーロッパの映画祭で賞を取って、アメリカの資本でアジアで映画を撮るってことも結構出て来ましたもんね」

黒沢「日本も含めて数人、商業映画ではないけど主にフランス辺りに価値を見出されて、世界的な映画作家として商業映画とは違うやり方で撮り続けている方もいます。ジャ・ジャンクーもその中の1人ですね」

富岡「例えばキム・ギドクとかホン・サンスは韓国ではほとんどヒットしない。でもイタリアとかフランスでは作家として認識されているからブランドとして海外の映画祭に出す。黒沢さんも海外においてはそれに近い位置にいるんですよね」

黒沢「僕は中途半端でね。どちらでもない凄くあいまいな所にいる。一方で平気でホラーもの撮ってプログラムピクチャーを作ったりしつつ、『トウキョウソナタ』でもそうなんですけど海外資本で撮ったり。オランダの制作会社で拠点となっているのは香港です。こういういい加減なスタンスの人は日本には少ない。それはひとえに商業映画が順調に撮れないから仕方なくっていうのがあるんですよ」

富岡「作っていく作品においても計算に入れるわけですよね。そこは約30年間積み上げてきた中で、一本一本方向性は的確な判断をしてそこに至ったんですね。これから作る人たちは日本の映画界の状況に合わせて、どっちに行くのかある程度決めていかないと厳しいと思います」

 

自主制作映画を撮り続けるという道

黒沢「昔と状況が全然違っていて一番興味深いのが、昔は自主制作映画で実力を身につけて、商業映画に食い込んで行くとかハリウッドに行くとかせざるを得ない状況だったのが、今は自主制作映を作り続けていくって道があるんですね。自主映画界でベテラン、とかそういった人や、低予算でも商業映画を何本か撮った人が再び自主制作映画を撮りたくなってCO2に応募してくるとか、“自主制作映画”って堂々としたテリトリーがちゃんとあるってことですね」

富岡「あるっていうより、作られていかないとしょうがないよねって思ってるんです。今映画っていうのはお客さんがどんどん入らなくなっていて、東京でも大阪でも厳しい状態です。劇場を経営している側から言うと、高いフィルムを外国から買って配給会社がリスクを持って宣伝してそれでも入らない状況。この作家の作品なら必ず入るって作品がなくなって来たわけです。それなら自主制作映画の連中に劇場を貸して、彼らは自分たちでチケットを売る訳ですから、そっちの方が割がいいと判断すると、自主制作映画であろうが何でもかける訳です。もちろんお客さんはお金を払って見に来る訳ですから、それぞれがプロデューサーとして矢面に立つことにはなります。そこで全体がつまんなければ自主制作映画は見られなくなりますよね」

 

フランス映画界の状況

ここで話は海外の資本をあてに出来るかということでフランスの話に。

黒沢「現実としては海外からお金が出るって、あるとは思うんですけど、誰がどんな形でお金を出したいと思い、出てくるのか。日本以上に分かりづらいですよ。
フランスとかは割と積極的にやろうとしてますが、彼らの中でも微妙な価値観あって、言ってることと、実際お金を出す段になったら大分違うってこともあります。
フランス映画なんか大体助成金で作られているようですが、巨大なCO2があるようなもんですね。僕も応募したりしてますが、助成金に受かる受からないの基準は分からないですね」

富岡「フランスでは映画は産業として成立していない?」

黒沢「それが一方では平気で成立していて、面白いように分断しているんですね。その象徴はリュック・ベッソンでフランスも日本と似ている状況でくだらない商業映画は結構あって、コメディとか国内だけで受けてるってものありますね。海外に出て行くとなるとリュックベッソン系のアクション」

富岡「フランス人向けに作られているメジャーの映画とは別にインディペンデント系で予算がそれなりにある映画も商品として出回っているってことですね。日本もここ80年代半ばから20年ほどは、ミニシアターが出来て業界が回ってたんですが、今本当に厳しい状況になってると思うんですよ」


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