2019年4月6日(土)、花開くコリア・アニメーション2019+アジア大阪会場限定イベントとして、「パク・セホン監督 人形アニメーション実演講座」を開催しました。
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|ゲスト
パク・セホン 박세홍 PARK Sehong(『妖怪進撃図』監督)
人形アニメーションに使うミニチュアや人形の関節制作技師として、テレビシリーズ『ギャラクシー・キッズ1』(KBS1、2015~2016)や「サムソン電子」CF、チョン・スンベ監督作品『2人の少年の時間』など、さまざまなストップモーション作品に参加。初の監督作品である人形アニメーション『妖怪進撃図』(2018)は、「インディ・アニフェスト2018」で見事デビュー賞を受賞した。現在「活動人形工房」を運営、人形アニメーションを制作している。
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【実施内容】
(1)パク・セホン監督の紹介
(2)「妖怪進撃図」をTVモニターにて上映(メイキング3分含む)
(3)パク・セホン監督のパペットアニメーション撮影デモンストレーション
(4)パク・セホン監督の撮影術インタビュー
(5)参加者からのQ&A
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(3)撮影デモンストレーション
『妖怪進撃図』で実際に使用した人形で、ジャンプするカットの撮影をデモンストレーション。
少しずつ動かしながら1枚ずつ写真を撮っていきます。
自立できない動きの時は「突き出し」と呼ばれる固定用のアームを腰のあたりに接続して撮影し、あとでPhotoshopなどで消すそうです。
フレームアウトする最後の数枚は、突き出しではなく監督自身が人形を手で持って撮影されていました!
完成映像を見ただけでは知ることのできない裏側を見ることができ、参加者も驚かれていました。
服が風ではためく動きは、服を人形の胸筋あたりにひっかけて曲げることで動きを作られていました。
服にワイヤーが仕込まれているわけではないのですが、この方法で動いて見せることができるとのこと。
できあがったカットがこちら!↓
(1)ジャンプ
(2)ジャンプ(突き出しを消したバージョン)
(3)服がはためく
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(4)パク・セホン監督の撮影術インタビュー
<人形について>
人形はどんな素材でできていますか?
原型はスカルピーで造形した後、シリコン型を作り、特殊メイクやマスク等を作るときに使われる柔らかくて丈夫なアメリカのSmooth-Onというメーカーのドラゴンスキンというシリコンを人形の材料として使っています。
人形は骨組みから自作されていますか?
人形の骨組み(アーマチュア)は自分で作っています。
人形の骨組みを作るスタッフとして、ストップモーション制作を始めました。
工場で作って販売するくらい丈夫だったり精巧ではないですが、できる限り自分で作って使おうと思います。しかし付属の量が多い時は工場に注文した方がより効率的だと思います。
『妖怪進撃図』では髪や布が風ではためく表現が多いですが、素材に工夫をしていますか?
まず、布が必要以上に風にはためく場面が多いのは、人形の表情の変化がほとんどないので、布でもはためく表現でもあれば、アニメーションだと言えると思い、そうしました。
そして素材は、実際のものと同じような材料を使用するようにしています。
キャラクター1体にあたり、顔は何パターンくらい作りますか?
登場するすべての人形はすべて1体の顔のみを使いました。ただ、目の動きで状況を表現しました。
驚いた時は顔を上げ、視線は下に。怒った時は、顔を下げて視線を上に。そして無表情の涙(ベビーオイル一滴)。
企画する際、顔の表情を5〜6個程度パターンを作ったが、試すことができず、次の作品の『龍のいない村』では試そうと思っています。しかし、無表情の人形が、むしろ観客の方々に、より想像の余地を与えたのではないかという気もします。
目の瞬きはどう表現していますか?
瞬きは、シリコンの顔にスカルピー粘土でつくった瞼を付けたりとったりし、短くて2フレーム、長い時は10フレーム以上使い、境界線は、Photoshopで消しました。
人形はどのように立たせていますか?
人形の足に磁石を取り付け、突き出しを多く活用しました。
セットの床は、1cm木の板に1mmの鉄板を固定して使用しました。
<セットについて>
セットや小道具も自作されましたか?
ほとんどは作りました。
人形の衣装や小物は購入したりもしました。
もともとは制作支援を受けて、もっと大規模な制作をしたかったが、落ち続けて、自ら失望し、結局は粗雑だが、自分で作ることにしました。
しかし、それはほとんどの工程を自分でやったという自負心もくれました。
会社に通う時、セットを作るスタッフもいたことが参考になり、多いに役立ちました。
岩、家、地面はどんな素材で作られていますか?
石は発泡スチロールが材料で、私のプロフィールにある『気になるピンポ2』(2005年)の背景として使用し捨てられたものを10年以上保管していましたが、『妖怪進撃図』で再利用することができました。引っ越すたびに場所ばかりとり、何度も捨てようと思いました…
家は角材と稲わらを使用して自分で作りました。計画ではミニチュアの専門家の方に依頼をして格好良く作りたかったのですが、ままならず、自分で作ることになり、不足な部分が多いが、それなりに博物館に行って伝統草庵の構造や材料も調査して勉強し、さまざまな角度から撮影することができるようにしました。
地面の底は鉄板の上にシートを貼って、アクリルカラーで着色しました。
<撮影について>
空中での格闘はどのようにして撮影しましたか?
『妖怪進撃図』の撮影の中で、一番先に制作しました。
特別な背景がないので二つの人形とも、ブルーバックの板を背景にクロマキー撮影をしました。
何よりも、空を飛んでいるシーンで、アニメーションだけの魅力を感じることができるのではないかと考えます。空を飛びかうことができる演技者はいないので、アニメーターだけができるシーンを表現したかったのです。そして面白かった『ドラゴンボール』へのオマージュです。
約7分の作品の中で、何枚の写真を撮影しましたか?
1秒24フレーム基準で通常12フレームを主に使用していました。(2コマ撮り)
1分に720枚、時には8フレームを使用した場合もあって、約5,000枚前後の写真を撮影しました。
<撮影後について>
合成や編集は自身でされましたか?
合成は、Photoshopで、編集はアドビプレミアのプログラムで自分でやりました。
音楽も依頼をすることができる状況ではなかったので「OPEN BEAT」という音楽サイトで、著作権フリーの音楽を雰囲気に応じて3~4曲購入し、挿入して編集しました。
表情の変化が最小限に留められているが、声優の声でおもしろさが倍増している印象。声優にはどのように演出しましたか?
予算の問題から、一人の声優が、ソンビ、妖怪、剣客、エキストラなど、すべての男性の声を録音しました。ソンビの妻の声はセリフがそんなになかったので、録音スタジオの社長が、知り合いの女性の声優の方にお願いしてくれて、そのままやってくれて。私にとってはデビュー作なので、録音スタジオに初めて行ったし、声優に演出することもなく、声優が勝手にやってくれました。40分ほどかかったようです。私が思いもしなかったアドリブも入れてくれたし、とにかく、声があるのとないのでは、内容の伝達の差が大きく、期待以上でありながらも、今まで作業してきたことを考えると虚脱しました。結論は、いい声優さんにうまく会えたのだと思います。
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インタビュー後には、参加者のみなさまに、実際に人形を触ったり、監督に直接質問をしていただきました。
レポート:小川泉(CO2運営事務局)