2019年5月2日

関西在住!アニメーション作家特集 トークレポート

2019年4月7日(日)、花開くコリア・アニメーション2019+アジア大阪会場限定イベントとして、「関西在住!アニメーション作家特集」を開催しました。大変盛況で満席となったこの上映の、上映後トークのレポートです。
「関西在住」と銘打っておりますので、おひとりずつどちらに在住かもお聞きしました。

上映プログラム紹介ページはこちら 花コリサイトはこちら

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登壇ゲスト
「子どもの領分」やまときょうこ さん
「子どもの領分」日野馨 さん
「子どもの領分」永田ナヲミ さん
「子どもの領分」赤木崇徳 さん
「子どもの領分」ウエマリイン さん
「来て見てここはね」オオニシカオリ さん
「ドヴォニール(Dvoneil)」中村古都子 さん
「誘惑」K.Kotani さん
「遅延信管」中村 武 さん
「ねずみとり」小岩洋貴 さん

進行:「夢路/片足ズボン」小川 泉(大阪市在住)
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「子どもの領分」by animation soup

(左から)
第1曲 「グラドゥス・アド・パルナッスム博士」やまときょうこさん(大阪市在住)
第2曲 「象の子守歌」日野馨さん(京都市在住)
第3曲 「人形へのセレナード」永田ナヲミさん(京都市在住)
第5曲 「小さな羊飼い」赤木崇徳さん(大阪市在住)
第6曲 「ゴリウォーグのケークウォーク」ウエマリインさん(大阪市在住)

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小川:今回の上映作品「子どもの領分」は、ドビュッシーの6曲からなる組曲に、みなさま一人ずつそれぞれの解釈や技法でアニメーションを製作されたという作品です。
文化庁の助成を受けて製作されたとのことですが、どのような経緯で助成を受けることになったのですか?

ウエ:いつもだったら自分達でそれぞれ作品を作ってればお金はそんなにかからないけど、今回の企画ではピアノを弾いてもらったり音楽をつけてもらったりと、いろんな人を巻き込むにあたってお金が必要なので、助成金でそういうものを捻出しようという話になりました。

小川:この6曲を誰が作るという割り振りはどのように決められたんでしょうか?

やまと:もう一人の東京のメンバー(第4曲 「雪は踊っている」ヨシムラエリさん)も含めて、みんなどれをやりたいかチャットで会議をしてたんですけど、いっせーのーでで自分がやりたい曲を「何曲目!」って投稿して、かぶったら話し合い、というか。

小川:かぶったりもしたんですか?

永田:迷ってる人は第一希望、第二希望とかって書いて、上位からこう…

小川:喧嘩せずに?

永田:結構喧嘩せずにいけて(笑)

やまと:思うところはあったかも知れへんけど…(笑)最終的には…

小川:最終的にはみなさん合意の上で。

やまと:はい。


【来場者からの質問】
・冒頭に「Original Version」と書いていたのですが、あれはどういう意味だったのですか?

やまと:助成金をもらってやりたかったことの一つに、もともとのピアノ曲と全然別アレンジの曲をつけたバージョンを作ってみたいというのがあって、いろんな音楽のアーティストさんにそれぞれ曲をアレンジしたバージョンを作ってもらって。

ウエ:アニメーションは一緒で、音楽がA面B面あるみたいな形で、ドビュッシーのピアノ曲と全然違う現代音楽版があって。

やまと:アレンジバージョンみたいな。それで今回は原曲のピアノバージョンの「Original Version」だけ上映させていただきました。

・オリジナルバージョンはドビュッシーの原曲から得た印象で映像を作ったと思いますが、現代アレンジバージョンのほうは、音楽家やサウンドデザイナーの方に、完成した映像をもとにして音楽を作ってもらったという形ですか?もしくは映像と音楽は同時進行で進めていったのですか?

ウエ:それぞれ違うんですよね、進め方が。アレンジバージョンのほうは各自で進めていて。

やまと:わたしは音楽アレンジをお願いした時に何も映像ができてなくて、映像はこういうイメージで作るので、音楽はもう好きにやっちゃってくださいって感じでお願いしてしまいました。

小川:分数だけお伝えしてということですか?

やまと:原曲のピアノバージョンと大体なんとなくの絵コンテはお渡しして、あとはもうその方の音楽が好きなので「任せます」って言って。すごい困ったって言われました(笑)。

永田:私は映像がある程度できていて、まだ固まっていないところもあったんですけど、映像を見せながら最後ちょっと調節みたいな感じでした。
みんなそうなんですけど、全く新しいものを作ってとは言わずに、一応ドビュッシーの曲をベースに新しくアレンジしてほしいという感じでお願いしました。

・映像は1バージョンしかないとのことですが、オリジナル曲とアレンジ曲、どちらに合わせて編集されたんですか?

ウエ:オリジナルのピアノ曲に合わせて編集しました。

・この組曲を選んでアニメーションを作ろうと思ったきっかけはなんですか?

日野:10年くらい前に、京都市近代美術館のロビーコンサートがあって、そこで打楽器だけでドビュッシーのこの曲を演奏されていて、その時に永田さんと私とヨシムラさんの3人で行っていて、「アニメーションが!浮かぶ!」って(笑)。一回やりたいねって話になってから大分経ち、永田さんヨシムラさんが鳥取でレジデンスみたいな形で創作をされたときに、お知り合いのピアノの方に依頼ができて。結局その方から別の方を紹介していただく形になったんですけど、決まった時点で「よっしゃ!」ってなって声をかけて、進めてきたっていう感じです。

・鳥取のレジデンスに参加されていた時に作っていたのがこの映像っていうわけではない?

日野:ではなくって、

永田:誰もクラシックのピアノを弾ける知り合いがいなくて。そこから「あ、いた!」ってなって、その縁でこうなったっていう感じでした。

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(左から)
「来て見てここはね」オオニシカオリさん(奈良県在住)
「ドヴォニール(Dvoneil)」中村古都子さん(京都市在住)
「誘惑」K.Kotaniさん(大阪府豊中市在住)
「遅延信管」中村武さん(大阪在住)
「ねずみとり」小岩洋貴さん(京都府亀岡市在住)

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「来て見てここはね」オオニシカオリさん(奈良県在住)

小川:オオニシさんは、NHKみんなのうたのアニメーションをこれまで3本作られていますが、どのような経緯で作られたのですか?

オオニシ:今回上映させていただいた作品の最後のクレジットが「PLAiT(プレイト)」となっていたんですけど、そのPLAiTは、映像を担当している私と、シンガーソングライターの真依子さん、作曲・編曲をされている作曲家の未知瑠さんの3人で組んでいるユニット名なのですが、真依子さんの歌の「ふきとひよこ」が私が携わらせていただいた、「みんなのうた」の1つ目で、それがユニットを組むきっかけにもなりました。
真依子さんの曲のアレンジを未知瑠さんが担当されていて。私と未知瑠さんは、私がイギリスの大学にいた頃にインターネット上で知り合い、私の学生時のアニメーション作品に、曲の制作をお願いしていたりしていて。
偶然、真依子さんが未知瑠さんのサイトから私の作った映像をネット上で目にして、そこから未知瑠さんを通じてお互いを紹介してもらった形です。
当時、私はまだロンドンに住んでましたので、全部遠隔での作業で、誰にも直接はあいさつにも行けずっていう状況で製作していたんです。大変なこともありましたが、それがきっかけで、縁周りもあって、うまくまわったっていう形です。

小川:それの1作目の繋がりがきっかけで、2作目3作目と繋がっていったのでしょうか。

オオニシ:2つめの楽曲も、真依子さんの曲がまた偶然、ちょうどいい季節にはまったってことで。不思議な縁で作らせていただきました。ありがたいことですね。

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Kaori Onishi/オオニシカオリ twitter

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Dvoneil
「ドヴォニール(Dvoneil)」中村古都子さん(京都市在住)

スクリーンショット 2019-05-02 20.06.31

小川:今日は人形をお持ちいただいているんですね。意外と小さく感じます。

中村古都子:昨日、アニメーションのワークショップを受けられた方、それからトークをご覧になった方、昨日の人形とはかなりサイズ感も、それから持っていただいたらわかるんですけど軽さも違います。
構造がワイヤーアーマチュアなので、ずいぶん印象が違うと思うんですが、参考にもなるかなと思って一緒に来ました。
(※前日に同会場で、韓国のパク・セホン監督によるずっしり重い人形のパペットアニメーションの実演講座を行っていました)

小川:こちらの「ドヴォニール」は、もともと音楽があって、それのミュージックビデオという形で作られたんでしょうか?

中村古都子:この曲は、オセロケッツというバンドを組まれている森山公一さんのソロアルバムの作品のひとつです。
森山さんが『Record!』というアルバムを作られる時に、10曲以上の曲ひとつひとつにPVをつけたいということになって。
この「花開くコリア・アニメーション」にずっと来てくださってる方はもしかしたら覚えてくださってるかも知れないですけど、2013年にPEASという団体が上映とワークショップとさせていただいたんですけど、当時その団体に所属してたときにそのPEASにお話が来て。

(※花コリ2013大阪会場 PEAS作品特別上映ワークショップ紹介

で、好きな曲を選んでくださいっていう感じで、まだデモで1番しかできてなかったんですけども、この曲が一番画が浮かんだので、じゃあこれやりますっていうことで選ばせていただいて。
その後、私がキャラクターを作り映像を作ってやりとりする中で、映像を見ながら2番ができて、歌詞ができて。で、私が続きをまた作って。最後アレンジャーの方が映像に合わせてちょっと効果音を入れてくださって、最後の方はやりとりしながら曲と同時進行でできていった作品です。

中村古都子の人形アニメーション The official website

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誘惑
「誘惑」K.Kotaniさん(大阪府豊中市在住)

小川:作品の最後に「2018.10.20」と日付が出て、“a lot of beer”と“some coffee”と紙と鉛筆と…で作りましたっていう表記が出るのですが、あれはその日付の一日で全部作ったということですか?

Kotani:いえいえ、あれは作品が完成した日ですね。
これで全プロセスが終わって、これ以上触るところはないのでというところで日付を入れて、クレジットを入れて、できあがりということです。

小川:一日で大量のビールを飲みながら急ピッチで作られたのかと思ったのですが(笑)違うのですね。

Kotani:だいたい製作に半年くらいかかります。これは2ヶ月くらいでできたんですけど。1日だとだいたい1カットいくかどうかですね。

小川:そうですよね、失礼しました。(笑)


【来場者からの質問】
・あの海はどこかモデルみたいなものはありますか?

Kotani:いやまあ特定の海ではないんですけども…
よく須磨海岸でもこう、突堤がニョキッと海に出てて、そこの先で魚釣ってるとかよくあることなので。

・わたしは神戸在住なので、須磨海岸の風景を思い出しながら見てたんですけども、たしかになんかこう、出てますよね。

Kotani:ニョキッと垂直に。ふつうの防波堤の形と違って、あそこはまっすぐ。

・なんか山の形が六甲山っぽいと、そう思いながら見ていました。

小川:すごいですね!これは関西在住特集ならではの。作者とお客さまが同じものを見てらしたってことですね。


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遅延信管
「遅延信管」中村武さん(大阪在住)

小川:16mmフィルムで上映いたしました「遅延信管」という作品ですが、本編中のタイトルには「遅延信管地雷地獄」と書いてあります。どちらが正解ですか?

中村武:ああすいません!遅延信管でいいです。そこは触れないでください。
あと、最初に言っときますけど、オチは破綻してますんですいません。
絵コンテ途中で脱線してね、もう絵コンテなしで書いてったんで、どうしようかなあと思いながら。

小川:最初から絵コンテなしで作られたのですか?

中村武:いえいえ途中からもう脱線して戻ってこれなくなりまして。
次からはちゃんと、脱線した時からもうちゃんと最後まで絵コンテ描いてるんで、まあ次回作を…。

小川:中村さんはすごく長い間フィルムでアニメーションを作っていらっしゃって。デジタルで作るのとフィルムで作るのとでは手間が全然違うんですよね。ですが先日中村さんが、もう次からデジタルでやろかなと仰っていて。

中村武:ね、もうみんなまずフィルムで食いついてくるから、もう大概しんどくなってきた。

小川:フィルムで作ってる方ですって言われるのが嫌なんですか?

中村武:そう、そうですよなんか、えらいプッシュしてくるから嫌やなあと思って。

小川:フィルムの場合は現像が必要なので、関西だったら桜ノ宮にあるIMAGICAウエストさんに出されていらっしゃるんですよね。

中村武:もう日本くらいじゃないですか?現像やってるのは。アジアではもう日本だけですね。
いま車とか化粧品のCMはね、今でもフィルムで作ってるものもあるんですって。35mmで。
で、データに落としてまた東京に送り返すって言ってましたよ。

小川:今後もぜひ私はフィルムでやっていただきたいと思っております。

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ねずみとり
「ねずみとり」小岩洋貴さん(京都府亀岡市在住)

小川:最後に、「ねずみとり」の小岩洋貴さん。この作品は卒業制作だったので、もう10年前になるんですね。

小岩:そうですね。

小川:現在はどういう活動をされてるんでしょうか。

小岩:いまは、5年前くらいからNHKプチプチアニメの「おいどんと」っていう作品を作らせていただいています。

小川:京都の亀岡に住んでいるとのことですが、どのような生活をされているんですか?

小岩:田舎暮らしに憧れていて、いまは標高500mくらいの山の中で畑と田んぼをしながら、基本は自給自足で、家の離れでアニメーションを作っているっていう生活をしています。

小川:ねずみとりに出てくるおじいさんはまさに田舎暮らしをしていますが、あんな感じですか?

小岩:あそこまでではないですけど(笑)

小川:茅葺屋根とかではなく。

小岩:ではなく。でも周りはけっこう築300年とかの家はたくさんあります。

小岩洋貴(コイワシ)ホームページ

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トークではご不在でしたが、上映作品「anomalies」和田淳さんは神戸市在住です。
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ATSUSHI WADA website

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小川:関西在住アニメーション作家のみなさまでした。ありがとうございました!


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