●今年は童話を題材に!
CO2では、毎年少しずつ形を変えながらこども達が映画制作を体験するワークショップを開催してきました。
ここ数年は1分間映画(ワンカット・フィックス・セリフなし)に取り組んでもらいましたが、今年は童話を元に3シーン各3カットの作品を作るという初めての試みです。
まず2階のプラネットプラスワンにて、富岡事務局長解説で『ドリーの冒険』を鑑賞。映画の父と言われるD・W・グリフィスのデビュー作です。誘拐された少女ドリーの冒険を描いたサイレント映画ですが、みんな物語の筋をきちんと理解していました。
続いて3階の事務局に移動してワークショップの開始です。講師は第2回のCO2助成監督の板倉善之さん、Video StudioFrame Bird代表の上 球音(うえ・まりいん)さん、映像作家で保育士でもある松岡奈緒美さんの3名。
参加したこどもたちは、中学2年生から小4までの7人。いくつかの童話からみんながピックアップしたのが『桃太郎』と『ヘンゼルとグレーテル』。自分がやりたい方のチームに別れて、絵本を読み直しつつ、どんなお話かを改めて追って行きます。
こちらは『桃太郎』チーム。いっちゃん、ふたば、こっちゃん。いっちゃんがイラストでストーリーをまとめています。
こちらは『ヘンゼルとグレーテル』チーム。なな、わーこ、ゆうさく。エピソードを書いていきます。
●自分達が撮りたい物語をプレゼンする
今回3度目のワークショップ参加になるひょんも合流して、各チームのプレゼン。あらすじと物語の面白さを発表します。
『桃太郎』チームはいっちゃんが代表。みんなが興味を持ったのは絵本には書かれてない部分でした。
「何故桃太郎が鬼退治をしようと思ったか?」「サル・イヌ・キジが何故きび団子で鬼退治に同行したか?」
物語の面白さは「桃から生まれてくるところ」「きび団子の力」「みんなが協力して鬼退治をするところ」
『ヘンゼルとグレーテル』はゆうさくが代表。どんな物語か?「人を信じてはいけない」「家族の話」「頭を使う」「二人だったら出来ることもある」
どちらの物語にするか話し合いで決めることに。
「『桃太郎』は、なんでサル・イヌ・キジが付いて来たか描かれてないことを自分達で想像して映画で表現できる」といっちゃんが言えば、
「昔話って神様視点で描かれているから主観で描きにくい」とゆうさく。
わーこが「『ヘンゼルと~』はお菓子の家が出てくるねんで」と言えば「それだけやんか」といっちゃんのツッコミが。
ここで板倉さんの注意が。
「語論のルール。相手のお話がどう面白くなかったかじゃなくて、自分のお話がどれだけ面白いかで説得せな。映画を見る人に面白がってもらわないといけない。まずは一緒に作る人に、このお話どれだけ面白いか分かってもらわないと」
ルールを再確認したものの、白熱してくるとついつい人の話の途中で反論が始まって収集がつかない状態に。
双方意見譲らずで、くじ引き案、多数決案が浮上。講師陣から子供たちに、昼休みの間に大人も説得できるポイントを見つける、というミッションが課せられました。
さてどうなることやら?
●みんなを説得できたのは?
昼休み開けのプレゼン開始です。
『ヘンゼルとグレーテル』チーム
わーこ「1人なら出来ないことも2人やったら出来ることもあるというのがいいな」
ひょん「捕まったヘンゼルとグレーテルが助けたので、兄妹の絆が観られる作品じゃないかなと思います」
『桃太郎』チーム
いっちゃん「シンプルな物語の中にサル・イヌ・キジなどのユニークなキャラクターが出てきて、鬼退治をするために協力する桃太朗たちは、これから映画を作るために協力する私達にぴったりな話だと思うので選びます」
ふたば「桃太郎はおじいさんとおばあさんに止められても、たくましい心を持って鬼退治に行くという意志が強い。そこを入れたらいい映画になるんじゃないかと思います」
こっちゃん「鬼を退治して都の宝やお姫様を救い出す勇敢な桃太郎を映画にしたい」
多数決の結果は『ヘンゼルとグレーテル』に決定!ここで改めてストーリーを書き出して行きます。
上さんから「全部で3シーンを9カットで撮ります」という発表が。
エピソードを削る必要があると知り、どのシーンを撮って、どのシーンを省略するか?みんな頭を悩ませます。
「お父さんの優しさ」「二人の頭の良さ」を入れたいという意見のほか、生みのお母さんがアヒルに姿を変えて登場するシーンを入れるか、まま母を魔女にしては?という意見で盛り上がります。
板倉さんから「つじつまが合う合わないじゃなくて、魔女だったら何が面白くなるか考えよう」とアドバイスが。
上さんからも「制限がある中で伝えたいことを際立たせる。90分の大作なら、実はこうでああでと入れると面白いけど、限られたカット数の中で何を伝えたいのか」
その結果「VS魔女が一番必要、面白い!」と意見が一致。改めて組み立てを考えることに。
途中、富岡事務局長が会議の様子を覗きに。ひょんの「来たで」という小声を聞き逃さず、「来たで!面白いんやろうな(笑)」とスゴんで去って行くのにみんな爆笑でした。
森に置き去りにされた二人が落とすものは「光る石」か「パン」か。落としたはずの石が見えないのは「新月って設定にしたら?」と、ななから面白い意見も。
最終的にはお父さんの愛情を示すために「パン」という結果に。
しかし、3シーン9カットに納めるにはカットが増えてしまいます。松岡さんから「まま母との会話の中で愛情を示す言葉が出てきたら、パンをもらうシーンはいらないのでは?」と提案が。
それでは落とすものがなくなると、いう意見で。パンを落としていくシーンは残すことに。
「ポケットに入れていたなけなしのパンとすれば3カット目でお菓子の家までたどり着くかな」
ラストはお父さんとの再会シーンで終わると決定。
1時間半も考えすぎでそろそろ疲れが出てきた?ヘン顔を決めてくれるひょんとゆうさく。
続いて富岡事務局長の映画講座の時間。2階のプラネットプラスワンに移動し再びサイレント映画を鑑賞。
荷台から落ちたかぼちゃと農夫や通行人の追いかけっこを描いた『かぼちゃ競争』(1907 フランス)。トリック撮影満載の楽しい作品です。
続いてマック・セネットの『風呂桶危機一髪』(1916 アメリカ)。冒頭に上映した『ドリーの冒険』を撮ったグリフィスの元で働いていたチャップリンを見出したのがセネット。喜劇専門の映画会社を設立し制作した作品群の1本で、動きだけで見せるドタバタコメディ(スラップスティック)。チャップリンもこの系譜です。
「僕がさっき足を引っかけて転びそうになったら笑った人がいたよな。誰や?(笑)。そういうのが喜劇。100年くらい前に大流行しました。皆さんが今見る漫才なんかは、あまり動きで見るものはないね。外国のアニメは見る?『トムとジェリー』とか。あんな感じです」
ホテルの大掛かりなセットを惜しげもなく破壊していくエスカレーション演出に子供たちも大爆笑です。
3階に戻って配役、小物、衣装を話し合います。かまどは絵を描くことに。
一旦目処が立ったところで扇町公園にロケハンです。
二人が迷い込む森に見える場所を探して歩きますが、みんなおしゃべりに夢中で真面目に考えてない様子。
次回8/12は朝から撮影です。大丈夫か、みんな!???