2012年2月17日

レポート10/15(土)単発ワークショップ「映画技術講座/照明講座」

 

照明技師・岸田和也さんの照明講座

ビデオ撮影プロダクションを経てフリーとなった岸田さん。1995年より照明を専門とするようになり、CMなどでプロとして活躍。関西で活躍する三原光尋、安田真奈、横田丈実監督らの作品にも参加されています。最新作は柴田剛監督『堀川中立売』です。照明講座では実際のライティングをモニターで確認しつつのレクチャー。参加者の専門的内容から素朴な疑問までたくさん質問が出て有意義な照明講座となりました。
Q:テーマカラーをどう使いますか
あるキャラクターのイメージカラーがイエローだとしたら、その人以外が出るシーンには、イエローはできるだけ使わないようにします。
『コックと泥棒、その妻と愛人』のピーター・グリーナウェイ監督は、そういった使い分けが極端で非常に面白いと思います。部屋を移動するごとにテーマカラーが変わって、色が変わることでお客さんは場面が変わったことを認識します。色を何気に使うのではなく、気を使うことでより表現が深まります。
Q:『堀川中立売』で工夫した点は?
岸田:寺田というキャラクターがいて、彼は少年時代に殺人を犯して逮捕されずに、更生して保護司付きで生活しています。そんな過去のある男だから、寺田の背景に明るいものを置かないってことを僕の中に決めたんですね。シーンによっては背景が明るいことがあっても、寺田の目線の先には明るいものを置かない。明るいものがあるとプラスのイメージを含む画面になるからです。彼の前途には明るいものがないというメッセージを作ろうというライティングの意図です。日本では撮影と照明が別パートに別れてしまってるんですけど、外国では撮影監督っていうシステムで、カメラマンがライティングまで考えます。僕としてはそちらの方が合理的だし一貫性があるから、日本のシステムがいびつかなと思います。カメラマンの負担が減るという良さはあるにしても、色や光線、表情は撮影監督が責任を持つ方がいいと思うんですよ。 ?
Q:室内の撮影では蛍光灯をつけますか。
岸田:色々あります。一般の蛍光灯にはグリーンの色味が入っているため、グリーンの出ない蛍光灯を使ったり。ライト側にグリーンをつけてホワイトバランスを取る事もあります。蛍光灯があった方がいいか否かは、交換できる蛍光灯が用意できるかという予算によるし、場合によって様々な判断となりますね。どこにどういう光線が欲しいか。それに尽きるでしょう。安易に、ここにこの明かりがあるからこれでやろうかとなると、表現がそれに縛られて狭まってしまいます。ニュートラルにどこから当てるのが効果的か考えるのが先。消すか点けるかは作りたい画ありきの判断をします。
Q:モニターと実際のスクリーンでの誤差はありますか。
岸田:あります。それは永遠のテーマですね。一番信用するのはビデオの場合は波形モニター。色のレベルを波形で見せるモニターがあるんです。それで飛び過ぎてないか、暗すぎないかはビデオエンジニアと一緒に見て判断します。劇場によってプロジェクターの明るさやスクリーンの反射率の問題で条件が変わってくることもあります。
Q:オール自然光で撮ることはありますか。
岸田:ないですけど、そういう事を目指すって人もいます。それはそれでかなりストイックな戦いで面白いですけど、できたらやりたくないですよ。太陽は動くから、いい時間になるのを待ってないといけない訳です。もちろん、自然光ならではの効果はあります。でも狭い空間なら、ライトの方が動かせる分自由は利きます。窓から差し込む光を表現するのに、好きな高さでキープできるけど太陽は動くからね。自然光でやるのはものすごい時間がかかります。オープンで太陽が強く当たるようなシーン…草原とか、ライトではどうしようもないし、太陽でしか撮れないシーンは別ですけど。HMIと言って太陽光の波長に近い光を出す照明器具があって、太陽に似せて撮るんですけどやっぱり違います。人口の光は人口の光なんですね。太陽は赤外線から紫外線までの波長を全部もっていて、それが降り注いだときに人間の目が白と判断する。それが傾いて夕日になるのは空気中で青みが全部カットされるからなんですけど、その日中の太陽に似せたHMIは赤みがない。真夏の強い光を再現しても肌の色が良くないんです。太陽に勝てないっていうのが僕らの共通する意見です。
Q:LEDは使いますか
岸田:最近は使いますね。小さいものからパネルを合体させて大きいものにしたり。薄いので隠しやすいという利点がありますし、面光源として利用します。ただ発色が完全じゃないという問題はあって、まだまだ改良されていくのかなと。直進性が強くて、面光源のようでスポットライトのような当たり方をします。でも消費電力が少ないこともあって、これからLEDがどんどん主流になっていくと思います。歴史的にはタングステンの照明器具からHMI、その次に蛍光灯がたくさん使われるようになって、次にLED。80年代のHMIは相米慎二監督の『翔んだカップル』あたりですね。HMIは馬鹿でかいものから現在では進化して小型化し、光量がアップしてますね。何故大きい照明を使うかと言えば広範囲を大光量で当てられるということです。1994年の『RAMPO』の時代あたりに蛍光灯が使われるようになりました。それまで蛍光灯は色味が悪いし、光量がなかったんですね。

富岡:蛍光灯そのものが良くなってきたってこと?70年代ぐらいのアメリカ映画を観てるとロケで撮ってると蛍光灯の光がちょっと紫っぽかったりグリーンぽかったりそれがまた1つの雰囲気になっていて。駐車場でのアクションシーンとか。『ダーティーハリー』なんかを観ると刑事の部屋のシーンがちょっとグリーンぽい。それが安定してなかったってことなんですね。意図的な使い方でないと当てる照明としては使えなかった。

岸田:絵の中に入る分には使えても照明器具としては使われなかった訳です。その後、アメリカのメーカーが使い勝手のいい照明用の蛍光灯の開発を始めたんで大分普及しましたね。

Q:照明部の方が敏感に感じるところがあるかと思いますが、撮影中に失敗だなと思ったときに途中で止めることはありますか。
岸田:ありますね。監督やカメラマンとの関係性もあります。先輩監督だったら言いにくいとか(笑)。でも言います。芝居の途中ならカットがかかるまでやっていただいて声を掛けますよ。
参考
フィルムアート社の『マスターズオブライト』っていう本がありますが面白いですよ。『未知との遭遇』とか『ゴッドファーザー』の時代ですけど、何を意図してどういう撮影手法を使ったかということが書かれていて、今読んでも勉強になります。興味ある人はぜひ読んでみてください。