大阪フィルムアーカイブ計画

2021年度 収集・所蔵フィルム 上映会

主催:大阪中之島美術館、大阪歴史博物館、シネアスト・オーガニゼーション大阪、プラネット・プラス・ワン、ミュージアム活性化実行委員会
協力:神戸映画資料館/プラネット映画資料図書館

大阪フィルムアーカイブ計画上映会3/5(土)~3/12(土)

予告編はこちら↓

YouTube Preview Image

近代都市・大阪の映像と時代


-時代が大正から昭和になると、大阪の市井の人々のなかにも、自らカメラを持って映像を撮影する人たちが現れてきた。その背景には、都市における新中間層(ホワイトカラー)の台頭がある。彼らは、郊外に開発された住宅地に両親と子どもの核家族で住むケースが多かった。そこに、家族の日常や行楽の様子を捉えた「ホーム・ムービー」が生まれる。この傾向は戦後も続き、高度成長期に建設された団地に居住する家族も同様の映像を撮った。アマチュア・カメラマンが視線を向けた対象は、繁華街や近代建築、イベントなど多岐にわたる。大阪の場合、昭和初期に造られた新たな施設(大阪城天守閣が代表例)も多いため、そのような被写体に人気が集まった。その都市が持つ性格と撮影される映像は不可分の関係にあり、上映作品から大阪の映像の特徴を見付けるのも楽しいだろう-
(船越幹央/大阪歴史博物館学芸員)

 

大阪フィルムアーカイブ計画とは


−大阪フィルムアーカイブ計画は、過ぎゆく時間を記録する映像フィルムと、そのフィルムのひとコマひとコマを動画として再生することでよみがえる大阪、さまざまな日々の出来事と人々の暮らし、地域の記憶を継承していくプロジェクトです。 このプロジェクトでは、大阪で生きた人、大阪を訪れた人の撮影した映像フィルムを集め、動画として再生し、被写体となった明治・大正・昭和の時代の大阪や、大阪に暮らす人々の姿をいろいろな視点から見なおすことができるようにしていきます。過去の時代に生きた人々が見ていたものを現在に生きるみなさんと一緒にひもとき、大阪の歴史の一場面として未来の人々へ手渡します−
(松山 ひとみ/中之島美術館学芸員)

 

大阪映画の考古学の始まり


-映画が大阪で上映されて125年が過ぎました。映画会社が製作した初期日本映画の多くはフィルムが失われ、125年後の我々が見ることはもはや不可能です。一方でホーム・ムービーやアマチュア映画は1920年代のフランスのパテ社の9.5mmそして1930年代から16mmや8mmで個人的に撮影され、まだまだ皆さんの祖祖父や祖父・祖母の遺品として残されている可能性があります。こうした100年ほど前の市井の人々が撮影した風景には、プロも撮影しなかった風景や現実の人々が映っています。写真や小説や音楽など作者が整理し発信したものとは違って、フィルムの中には断片であっても、生きいきと動く生活の情報や空気がたっぷり詰まっています。それらはもはや懐かしいだけではなく、当時生まれていない人々にとっては未知の過去のヴィジョン。どうか田舎や実家の倉庫を発掘してみてください-
(富岡邦彦/プラネット・プラスワン代表/CO2事務局)

全7プログラム 入場無料(要事前予約)


A【戦前の大阪】1917~1940頃(デジタル上映/77分)

「大阪倉庫の爆発」1917年/5分/無声/35mm染色 天活大阪
■安治川の北岸(現在の大阪市福島区野田)にあった東京倉庫会社の倉庫が大正6年(1917)5月に爆発事故を起こし、周辺施設も損壊して多数の死傷者が出る大惨事となった。映像には、被害の状況や救護活動の様子などが写されている。大正期に存在した映画会社天然色活動写真小阪撮影所(現在の東大阪市河内小阪駅付近)が撮影した記録映画。

「護れ我等の大空」1934年 42分/無声/16mm/白黒 撮影:朝陽生
■昭和9年(1934)7月、近畿防空演習が実施され、大阪市内でも小学校区ごとに置かれた防護分団で演習が行われた。この映像は、南区(現在の中央区)の精華防護分団の防空演習を撮影したもので、発煙筒を焚いて避難する様子や国防婦人会による炊き出し、救護班による救助、防火班の消火活動などが時間軸に沿って写し出されている。撮影は朝陽生。この類の映像は各分団で撮影されたようだが、現在のミナミで行われた演習の様子には濃い戦時色が感じられる。

「大阪名所と亀の瀬地すべり」1931~1932年頃 19分/無声/16mm/白黒
■通天閣、天王寺動物園、天守閣竣工まもない大阪城などの大阪名所を撮影し、当時建設が進められていた地下鉄工事現場を訪れている(地下鉄御堂筋線の開通は昭和8年)。後半は、大阪と奈良の府県境にある「亀の瀬地すべり」で昭和6年(1931)に起こった地すべりの現地見学映像である。変貌していった昭和初期の大阪の景観や災害の実態を捉えた映像として価値がある。

「日本の姿・都市の建築美」1936~1940年頃 10分/無声/16mm/白黒
■建築に主題を絞って、東京・京都・大阪を紹介する映像。大阪では、川沿いにある建築が写し出され、河川に浮かぶ無数の船舶を捉えるなど「水の都」のイメージを強く伝えてくる。中之島付近の近代建築群や安治川沿岸の発電所などが取り上げられている。三都の特徴を比較して見られると同時に、80年余り前の都市景観が記録された興味深い映像である。

(以上:プラネット映画資料図書館/神戸映画資料館所蔵)

 

B【戦前モダン大阪と娯楽】(16mmフィルム上映/60分)

■戦前の大阪(大正末期から昭和初期)の娯楽は芝居から映画へと移りつつあった。誰もが生活し行き交っていた大阪の風景とそこで大衆が鑑賞した娯楽映画を鑑賞して、昭和初期の世界を体感。

「モダン大阪の都市景観」1929~30年頃 10分16コマ/無声/16mm/白黒
■昭和初期の大阪市街の風景を網羅した映像。大阪駅、市役所、中央公会堂、築港、毛馬閘門などの公的施設から、大阪城、四天王寺、大阪天満宮、住吉大社などの名所旧跡、四ツ橋、心斎橋、桜宮橋、堂島大橋など水の都の橋梁群、大阪ビルヂング、大阪中央電信局、大同生命などの近代建築、道頓堀、千日前、新世界などの繁華街まで、昭和4年・5年頃の都市景観を切り取り、モダン大阪の活況を浮かび上がらせる。(プラスワン所蔵)

「関取千両幟」1930年48分/無声/16mm/白黒 東亜キネマ
監督:後藤岱山(たいざん) 主演:羅門光三郎
■江戸時代の大坂で人気のあった稲川・千田川という二人の力士をモデルにした物語は、明和4年(1767)竹本座で初演され、その後「関取千両幟」として浄瑠璃の世話物。新内節・常磐津節などでも語られ、翻案され、落語でも知られるが、本作は東亜キネマで映画用に新たに書き下ろされた最初の長編映画化。撮影は京都だが、物語の舞台は江戸時代の大阪で、昭和5年に大阪敷島倶楽部から封切られた。都市はモダンになりつつも人々の感情はまだ江戸から明治を通じて残る義理の世界のお話を楽しんでいた。(語り・太鼓:コタニ・マリ)

(プラネット映画資料図書館/神戸映画資料館所蔵)

 

C【戦前のシネクラブとアマチュア映画の愉しみ】(デジタル上映/56分)

■蒲田松之助が撮影した9.5mmは昭和初期の大阪のイベントや都市景観を撮影した映像群では神社の祭礼や宝恵かごなどの年中行事、衆院選での当選祝賀、出征軍人の歓迎風景のような珍しい時局的な内容。後藤偲は、戦前に島之内などで「燈映社」を名乗って作品を製作。戦後、関西で1946年6月に全国に先がけて「パテーシネサークル」発足、48年に「関西小型シネクラブ」となるが、その正会員の越本吉太郎が撮影した「終戦後の大阪」は、1947年5月の大阪駅前、御堂筋、道頓堀や砲兵工廠の焼け跡を撮影。(蒲田松之助撮影9.5mm)

「大阪城と満蒙大博覧会」1932年
「大阪城付近と島之内」昭和初期
「遊ぶこどもたちと高津宮」昭和初期
「衆院選の当選祝い」1932年
「出征軍人の歓迎」昭和初期
「建国祭の北浜付近と道頓堀」1932年
「北新地の宝恵かごと大阪天満宮の正月」昭和初期
「生國魂神社の祭礼」昭和初期
「大美野田園都市」昭和初期
(以上、蒲田松之助撮影9.5mm/白黒/後藤偲作品/大阪歴史博物館所蔵)

「ハジメ」撮影年不明  13分/16㎜/白黒
「近代風景」撮影年不明 5分/9.5㎜/白黒
「Osaka Port 開港祭」1932年 5分/9.5㎜/白黒
「杓雪」1934年 5分/9.5㎜/白黒
「海ノ唄」1932年 5分/9.5㎜ /白黒
(以上:燈映社・後藤偲作品)

「終戦後の大阪」1947年 5分/8mm/白黒(越本吉太郎撮影)

 

D【戦前のホーム・ムービー〈平見家の生活〉】(デジタル上映/61分)

■1902年(明治35年)生まれで道頓堀、幸町にて材木店を経営していた平見辰一は1932年(昭和7年)に浜甲子園 大林組が阪神沿線に開発した〈健康住宅地〉に住居建設・移転。室戸台風の被害をうけ、1938年(昭和 13 年)甲子園八番丁へ新築転居の頃より8ミリカメラを購入・撮影。戦後は大阪市西区堀江に住む。その後フィルムは孫の高岡茂氏が譲り受けた。映像には、阪神パークや甲子園球場など阪神沿線の施設が捉えられ、旅先の湯崎温泉(和歌山・白浜温泉)の風景なども撮影されている。(高岡茂寄贈)

「甲子園球場」撮影年不詳 8分
「浜甲子園 阪神パーク」1940~1941 年 8分
「浜甲子園 白浜稲荷湯温泉」1841年 7分
「和歌山県白浜 稲荷湯」1941 年 13分
「天王山ハイキング」1937~1939 年
「家~阪神水族館」 撮影年不詳 12分
「運動会」撮影年不詳(戦後) 13分
(以上:平見辰一撮影8mm/白黒)

 

E【戦後の大阪の復興-1】(16mmフィルム上映/65分)

■焼け野原から復興する50年代の大阪。復興と共に格差も生まれ貧困から犯罪も増え始める。戦後日本のドキュメンタリーを牽引する柳沢寿男や瀬川浩らが結集した教育ドラマ

「どこかで春が」1958年/65分/16mm/白黒
監督:柳沢寿男 脚本:厚木たか 撮影:瀬川浩
効果:大野松雄 解説:宇野重吉
出演:今村正一 市口淑子 真砂純忠
●東大阪の布施にある中学校の演劇部。不良少年たちが北海道冷害地救援のための生活劇の練習に励んでいた。貧乏に負けず生き抜く子供たちを描いた児童向き劇映画。
■布施市(現在の東大阪市の西部)が舞台。近鉄の布施駅に程近い本町通商店街には映画館や酒屋などがあり、登場人物らの住む粗末な木造家屋や町工場などの風景。紙芝居、幻灯、オート三輪、露店、ネオンサインといった時代風俗も描かれ、戦後復興の途上にある街と人々が登場する。

(プラネット映画資料図書館/神戸映画資料館所蔵)

 

F【戦後の大阪の復興-2】(デジタル上映68分)

■戦後のアマチュア劇映画に加え、啓蒙・教育目的で製作された劇映画では、梅田の大阪駅、阪急百貨店、曽根崎警察署、大阪城、心斎橋の大丸、そごう、道頓堀。また料理店や喫茶店が並ぶ梅田の裏通りや旅館街、戦後復興期にある大阪の街角などの様子が見える。そして1960年代のベッドタウンとして開発された香里団地の家族記録。洗濯機を使いベランダに洗濯物を干す様子、誕生した長男、電気炊飯器のある食卓、誕生日に遊ぶ百貨店屋上など、高度成長期の団地に暮らす新所帯の暮らしと子供の成長記録。

「うさぎのお耳」1956年/7分/8mm/白黒
製作:横山藤平 演出:たつえ 出演:とよかず、たくじ
●とよかず君が積み木で自分塔を作り始める。弟のたくじ君も兄を手伝おうとするが…。
■京都在住のアマチュア作者の横山藤平(不詳)が製作したダブル8の劇映画。妻が演出し、二人の息子が出演していると思われる。

「私はだまされた」1952年/19分/35mm/白黒
監督・脚本:竹島豊 撮影:藤洋二  出演:創美座の俳優
●田舎から憧れの大阪へ就職しようと出て来たケイコさんが都会で騙された告白は‥。
■監督の竹島は戦後活躍した大阪の代表的な人物で「リングの女豹」などのキワモノのほか、大阪市や各自治体による広報文化映画を数多く遺し、1970年代まで活躍していた。
(プラネット映画資料図書館/神戸映画資料館所蔵)

「晃 1961.12月頃」1961年/5分/8mm/カラー
「新春」64~65年頃/5分/8mm/カラー
「41.10 誕生日(晃、伸)」1966年/3分/8mm/カラー

 

G【戦後・企業の歴史とバブルへ】16mmフィルム上映/(76分)

■企業や会社が社の記録や、記念に製作した映画にも大阪の風景が垣間見え、工員の様子や服装の変化も高度成長期からバブル期への大阪の記録である。

「田辺製薬 この10年」1954-1963年 1963/48分/16mm/パートカラー
■大阪城から中之島、そして船場の街並みが空撮。薬の町・道修町にある本社に加え、神崎川沿いに建つ加島工場(大阪市淀川区)などが登場。
●世界的な製薬会社となった田辺三菱製薬(合併前は田辺製薬)は1678年の大阪の薬種問屋から始まる。創業285周年を記念して製作した企業の記録。新たに撮影されたカラー部分は退色している。各地の工場での戦後の映像を交えて製薬の過程なども紹介。(提供:田辺三菱製薬)

「世界は大阪から」1983/28分/16mm/カラー 製作記念記録映画
■バブル期に建築されたアクティ大阪の完成時にアルミ壁画のレリーフが製作過程を京都の工房からアクティへの設置までを記録。80年代に大きく変化した大阪駅周辺が望める。

 

~特別連携上映~
最新の大阪の風景を撮影した1分間の物語
<シネマ・スコラ2022作品>


■最新の大阪の風景を白黒フィルムで1分間の物語を撮る。125年前(日本に上陸して125年)の最初からフィルムで映画を撮り直してみようという2020年末からスタートしたワークショップ企画の第2弾。

■2021年末にそれぞれが6枚の大阪の風景から物語を考え、2022年1月に毛馬桜ノ宮公園界隈で撮影。完成したばかりの11作品。100年後には2022年の大阪の風景を記録したものとしてアーカイブの一つになる。撮影者は20代から50代までの男女と幅広く。それぞれが考える物語にも2020年の印象が刻印されているだろう。

「Film goes On」「作戦」「カメラ女子」「羊頭狗肉(ようとうくにく)」「サイコーSession」「狙い」「天までとどけ」「裏取引」「エン結びの森」「ヲタクの夢」「初対面」2022年/合計11分/16コマ/16mm

スケジュール・会場


スケジュール 3/5(土)

  • 11:00〜 F〈戦後の大阪の復興-2〉
  • 13:00〜 E〈戦後の大阪の復興-1〉+シネマスコラ2021
  • ※13:30~オンラインワークショップ「地域映像で記憶をひらく」

3/6(日)

  • 11:00〜 A〈戦前の大阪〉★ ✳︎満席
  • 13:15〜  B〈戦前モダン大阪と娯楽〉● ✳︎満席

3/7(月)

  • 13:00〜 C〈戦後のシネクラブとアマチュア映画の愉しみ〉★
  • 15:00〜 E〈戦後の大阪の復興-1〉+シネマスコラ2021

3/8(火)

  • 13:00〜 D〈戦後のホーム・ムービー(平見家の生活)〉★
  • 15:00〜 F〈戦後の大阪の復興-2〉+シネマスコラ2021

3/9(水)

  • 13:00〜 A〈戦前の大阪〉★
  • 15:00〜 C〈戦後のシネクラブとアマチュア映画の愉しみ〉★

3/10(木)

  • 13:00〜 E〈戦後の大阪の復興-1〉
  • 15:00〜 G〈戦後・企業の歴史とバブルへ〉

3/11(金)

  • 13:00〜 D〈戦後のホーム・ムービー(平見家の生活)〉★
  • 15:00〜 F〈戦後の大阪の復興-2〉+シネマスコラ2021

3/12(土)

  • 11:00〜 B〈戦前モダン大阪と娯楽〉●
  • 12:30〜 G〈戦後・企業の歴史とバブルへ〉
料金 全7プログラム 入場無料(要事前予約)
会場 プラネット・プラス・ワン(大阪・中崎町)

★…船越幹央(大阪歴史博物館学芸員)の解説付き
●…語り+太鼓+SPレコード再生:コタニ・マリ

※3月5日(土)13:30~オンラインワークショップ「地域映像で記憶をひらく」
※新型コロナ感染症拡大防止のため中止の場合がございますのでご了承ください。

詳細はこちら→中之島美術館・オンラインワークショップ専用ページ

 

予約方法(3月3日まで)


✳︎受け付けは終了いたしましたが、3/5(土)3/10(木)3/11(金)は若干数余裕がございます。
ご希望の方はご連絡ください。

電話か下記メールフォームのみ

①鑑賞希望プログラム(日付のプログラム)
②氏名
③人数
④電話番号
をご予約ください。

電話:プラネット・プラス・ワン 06-6377-0023(10:00~19:00)

※つながりにくい場合もありますがご了承ください
※満席になりしだい締め切らせていただきます。
※当日、キャンセル等で空きがあれば入場できる場合もございます。

↓メールフォームはこちら(返信に2日程度いただく場合があります)

    氏名
    フリガナ
    メールアドレス
    お問い合わせ内容

    安全・快適にお過ごしいただくため

    着席にてご鑑賞ください。途中入室はお断りする場合があります。入場時にアルコール消毒等手洗いにご協力ください。
    マスクを着用してご参加ください。発熱や風邪のような症状のある方につきましては参加をお控えください。