CO2映画講座

『スピオーネ』を解体

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■第12回CO2の助成監督選考委員も担当していただいたローランド・ドメーニグ氏を招いて1928年に製作された巨匠フリッツ・ラング監督の国際スパイ映画の傑作「スピオーネ」を読み解く。

■1914年から1918年まで続いた第一次世界大戦の敗北とドイツ革命の勃発により、皇帝ヴィルヘルム2世がオランダに亡命してドイツ帝国は崩壊した。1919年よりドイツは共和制国家となり社会民主党・中央党・ドイツ民主党が多数を占め、連立政府を形成。この連合はワイマール(ヴァイマル)連合と呼ばれ、2月6日からヴァイマルで国民議会が開催され、2月11日の大統領選挙でエーベルトが臨時大統領に選出され、シャイデマンを首相に指名。7月末にはヴァイマル憲法 が採択され、8月11日に公布された。共和制となったドイツでは新たに映画産業に力を入れはじめた。第1次世界大戦中の1917年に設立されたウーファ社は、第一次世界大戦のためのプロパガンダ映画や公共映画を制作する会社としてベルリンに設立されていたが、1921年に民営化され、毎年600本もの作品を送り出すドイツ映画界を代表する制作会社となっていく。こうした情勢でフランスやアメリカ映画に対抗して国際的に通用する大作映画の製作をスタートさせた。『吸血鬼ノスフェラトゥ』(1921)や『最後の人』(1925)のF・W・ムルナウ監督。そして『死滅の谷』(1921)『ドクトル・マブゼ』(1922)そして『ニーベルンゲン:ジークフリート』『ニーベルンゲン:クリームヒルトの復讐』(1924)の2部作を経てSF映画史にも残る『メトロポリス』(1927)でドイツ映画界を象徴する巨匠となったのがフリッツ・ラングであり、1933年のヒトラーの登場までのこのワイマール時代にドイツ映画が黄金時代を迎えることとなった。『スピオーネ』は巨匠となったラングが自身の製作会社を興して撮ったスリリングな国際スパイアクション映画である。第1次世界大戦後は一方で社会主義国のソ連が台頭し、資本主義と社会主義が対立しはじめる時代でもある。東洋の端の大日本帝国では1926年に昭和になったばかり、不況の中で着々と中国大陸への侵略を狙った時代であった。そんな中でフリッツ・ラングは当時のソ連のスパイ事件を題材にスパイ犯罪映画として完成させた。

 

 

 

〈上映作品〉
『スピオーネ』Spione/Spies

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1928/ドイツ/20コマ/108分 英語版(日本語字幕付)/ウーファ社作品
制作:エーリッヒ・ポマー
監督:フリッツ・ラング
脚本:テア・フォン・ハルボウ
撮影:フリッツ・アルノ・ワグナー
出演:ルドルフ・クライン・ロッゲ(ハーギ)、ゲルダ・マウルス(ソーニャ)、リエン・ダイヤース(キティ)、ヴィリー・フリッチュ(ドナルド・トレメイン諜報員326号)、フリッツ・ラスプ(イェルシッチ大佐)、ルプ・ピック(マツモト博士)
■第一次世界大戦後、世界は国際的に暗躍するスパイが重要な役割をもちつつあった。欧州の某所に首領ハーギを中心に各国の秘密を探知し大仕掛な組織的な間諜団があった。首領のハーギは足が不自由だが正体を知っている者は部下にさえ一人もいな謎の男。どんな人物にも変装しどんな極秘文書も盗み出す。欧州各国の政府当局者はハーギを追うが、ハーギは表向きは銀行の頭取で善良な富豪であった。ハーギの謎を暴こうとする唯一の男が
イギリス秘密諜報局の326号で通称ドナルド・トレメーンだった。ハーギはトレメーンを味方につけるため女スパイのソーニャを送り込んだ。トレメーンはソーニャの美貌に心ひかれる。その頃、日本とイギリスが秘密条約を調印しようとしていた。ハーギは条約内容を手に入れるために女スパイのキティを日本の諜報員であるマツモト博士のもとに送りこむが…。

 

 

〈講義〉
ローランド・ドメーニグ(明治学院大学文学部芸術学科准教授)

DOMENIG, Roland
■1966年ウィーン出身。ウィーン大学東アジア研修所日本研究准教授を経て、2013年より明治学院大学文学部芸術学科准教授。学問的研究以外、映画祭のプログラマー、日本映画特集のキュレーター、ラジオ・テレビ番組の企画者、映画字幕の翻訳者など、ヨーロッパをはじめアメリカとアジアでも幅広く活躍。プログラマーとして、ニューヨーク近代美術館(MoMA)の「日本アートシアターギルドと日本アンダーグラウンド・フィルム」大特集、ウィーンとザグレブの「鈴木清順回顧展」、ウディネ東アジア映画祭の「朝倉大介特集」を企画。翻訳者として、宮崎駿監督の『もののけ姫』や北野武監督の『座頭市』をはじめ数多くの日本映画のドイツ語字幕訳を担当。1999年から墺日学術交流会の会長としても努めている。

 

 

〈演奏〉
鳥飼りょう(ピアノ)

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■サイレント映画伴奏者。ピアノ、パーカッション、トイ楽器等を演奏。2012年11月、Planet+1「西部の偉人 ウィリアム・S・ハートの全貌」でデビュー。全ジャンルの映画に即興で伴奏をつけ、これまでに演奏した作品数は400を超える。映画に寄り添うその演奏は好評を博し、国内・海外の映画祭にも招聘されている。また、オーケストラへの客演やダンスとの即興演奏にも取り組むなど、多彩な活動を展開している。2015年12月よりPlanet+1の長編シリーズ「映画史~映画の樹」でのサイレント映画の全伴奏を担当。現在、年間100公演以上のサイレント映画伴奏を行っており、最も上映会で演奏する伴奏者のうちの一人として活動している。
鳥飼りょうfacebook /Twitter 

 

 

スケジュール ―3/11(日)―

  • 13:00〜 『スピオーネ』上映@プラネット
  • 15:00~ 『スピオーネ』講義@CO2運営事務局
    ※16:30終了予定
料金 3000円(映画鑑賞料金込み)/10代無料(要証明書)
会場 プラネット・プラス・ワン(大阪・中崎町)/CO2運営事務局(大阪・中崎町)
事前申込み 入場はメール予約いただいた方優先となります。
info@co2ex.org(CO2運営事務局)まで、件名「スピオーネ申込み」氏名、連絡先をお書き添えの上ご連絡ください。