2012年2月17日

レポート10/29(土)吉田浩太監督のCO2特別映画講座(1)

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第2回CO2助成作品?『お姉ちゃん、弟といく』のこと

富岡:吉田さんはENBUゼミナールで撮った『象の涙』でCO2に応募、助成監督になって『お姉ちゃん、弟といく』を撮りました。ENBUゼミナール卒業後、シャイカー(★)に所属したんですね。ここではどんな仕事をしていたんですか。

★シャイカー:『呪怨』の清水崇監督や『裁判長!ここは懲役四年でどうすか』の豊島圭介監督らが所属

 

吉田:おもにNHKの仕事で、ドラマのADや『天才てれびくん』のフロアディレクターを務めました。

 

富岡:『お姉ちゃん、弟といく』は、『象の涙』とは全然違う系統の作品ですね。この作品で吉田さん自身も自分の作風が見えたっていうか。エロに特化した(笑)

 

吉田:企画を思い浮かんだのは、カフェでバイトをしているときに、スカートの短いお客さんが来たんですね。その人がノーパンだったら面白いだろうなって思って(笑)。それがテイストかどうかは分からないですけど(笑)

 

板倉:ボーリングのシーンがとっかかりだったんですね。一番気合入ったって盛り上がるところでした。

 

吉田:ノーパンボーリングをやらせたかったという(笑)

 

富岡:40分の作品ですが、何日で完成したんですか。当時は助成金30万でしたけどトータルでどれくらいかかりましたか?

 

吉田:ちょっとこぼして5日くらいですね。最初、制作費は自分で出したんですけど、最終的に会社に出してもらいました。確か60万円くらいですね。

 

 

“お姉ちゃん”を軽やかに演じた江口のりこさん

板倉:お姉ちゃん役の江口のりこさんってどうやってキャスティングされたんですか。吉田:『月とチェリー』っていうタナダユキさんの作品を観て惹かれました。事務所の人が知り合いだったものでお願いして。スケジュールが合わなかったんですが、直前に空いて参加してもらえました。脚本も事前に見てもらっていて、江口さんは全然抵抗なくやってくれましたね。富岡:その年のCO2の女優賞は江口さんでしたね。この作品で江口さんのカラーが見えて来た感じはしますよね。江口さんは元々兵庫県の方で東京へ行って東京乾電池に所属してやってるんですね。もう1人の菜葉菜さんは、ピンク七福神の1人・鎌田義孝監督『YUMENO』(’05)を始めたくさんの作品に出ています。瀬々さんの『ヘヴンズ・ストーリー』には、2人とも出ているんですよね。

 

板倉:その後の作品『ユリ子のアロマ』も江口さんですけど、もう1本江口さんでやりたかったんですね。

 

吉田:訳の分からないキュートさがあって、僕はすごく好きになったんですね。ほとんど恋愛感情に近いようなもので、ずっとラブコールをして『ユリ子』に出てもらったって感じです。

 

富岡:江口さんを演出するのはどういう感じだったんですか。

 

吉田:『お姉ちゃん』の時は凄いやりやすかったですね。意図は話すんですけど、こういった描写はいやだとか言われることもなく、あっさりやってくれましたね。

 

富岡:本人的にもはまった役だったんじゃないですか。

 

吉田:どうでしょう。自分で路線を決めたりってことも恐らくないと思うんですね。今見返してみて、こういう話なら普通お姉ちゃんが沈んでしまうんでしょうけど、あのくらいに軽やかにやっているのは、無欲だからなんだろうなって気がします。

 

 

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CO2後の助成監督たち

富岡:『お姉ちゃん、弟といく』と『象の涙』はCO2の後、東京でも上映しましたね。吉田さんはもう一本江口さんで撮って2本合わせて公開したいんですって言ってたんですけど、病気で倒れて休養して。復帰後に『ユリ子のアロマ』を撮ったんですね。吉田:『ユリ子のアロマ』を渋谷のユーロスペースで公開した時に、板倉さんの『にくめ、ハレルヤ!』も上映していたんですよね。第2回のCO2のとき、僕と板倉さんの作品は対極にあって、僕のはエンターテイメントで板倉さんのはアーティスティックな部分があったんですね。CO2のときは僕も分かんないなーって印象で板倉さんも恐らくそういった感じだったと思うんです。去年一昨年くらいに観返したときに、やっと分かったということはありましたね。板倉:僕もまったく一緒で、CO2の時は同期の監督のことは粗探しというか、“これは面白いと認めない”といった感じで(笑)。観直してみて、こんなに純粋に楽しめる映画だったの!?と思いましたね。

 

富岡:僕がやったCO2の第1回目、2回目の中で一番エンターテイメントってことを意識して、その後商品としても廻っていくことを計算していたのは吉田さんなんですよね。予算的には無理をせずに、その先のビジョンもあって。40分で5日くらいで撮って、その後もう1本作るという計算はきっちりしていた訳ですね。

 

吉田:CO2に応募したとき30万って話を聞いていたんで、その時の思考回路としては、30万だったら絶対中編だよなって。出来上がったのがみんな長編だったんで凄く驚きましたね。中編は僕だけでしたよね。

 

 

『ソーローなんてくだらない』のこと

吉田:新作の『ソーローなんてくだらない』の主演は芹澤興人さんと梅野渚さんです。型ではないお芝居ってものを『ユリ子…』を撮った後に整理して、初心に立ち返って作ったのがこの作品。僕の中では手前味噌ですが一番いいなと思っていて、青春Hっていうレーベルの一遍として撮ったものです。富岡:今回は青春Hのセカンドシーズンですね。ピンク映画を撮っていた、いまおかしんじさんやサトウトシキさん。佐藤佐吉さん、白石晃士さんといった30代から40代の若手の監督中心にしていますが、残念ながら関西では第1弾しか上映がなくてDVDリリースになっていますね。『ソーローなんてくだらない』は第七藝術劇場で公開です。ぜひ見ていただければと思います。吉田:僕が早漏なんで改善したくてインターネットで調べていると、自分ひとりでは直せない、協力者が必要だってってことが分かったんです。主人公には好きな女の子がいて、その子とセックスしたいがために、ルームシェアしてる同居人の女の子に協力を頼む。彼女は嫌々ながら早漏改善を手伝っていくってどうしようもない話なんですけど(笑)。

コメディとしても面白いと思うし、手伝うことで関係性が変わるその構図が面白いと思います。ヒロインの梅野渚さんは前田弘二さんの昔の自主映画の作品によく出ていた人で、当時からいいなって思っていたんです。主演の芹沢さんは今泉力哉くんの作品によく出ています。

 

映像を組み立てる監督・演出で何かを引き出す監督
富岡:CO2審査員の黒沢清さんなんかは映像をどう組み立てていくのかってタイプで、山下敦弘さんや吉田さんは演出をつけてそこから何か引っ張り出すタイプですね。吉田:板倉さんは黒沢さん的な雰囲気と言うか。もちろんお芝居はあるんですけど、映画の表現の方法を作っていく。板倉:CO2が終わって振り返ってみると、自分のビジョンにはめていくってことをやっていたんだと思います。先日ワークショップで短編を撮った時は全く違っていて、お芝居ありきでした。自分が書いた脚本じゃないっていうのもあるんですけど、キャラクターが「どんな人か」、分からないなりにも考えながら撮りました。考え方が変わったのかもしれないですね。吉田:それは見てみたいですね。

 

富岡:吉田さんは今まで脚本も全部自分で?

 

吉田:はい。次の分を今書いてるんですけど、既に10稿近く行っていて。突破口がないので、一度女性の方に入ってもらおうかなと思ってるんです。『ソーローなんてくだらない』は役者さん演技のことだけを考えて撮った作品ですけど、逆に今は別のベクトルに行きたいです。役者さんを搾り出しつつ、板倉さんが言ったようなビジョンも考えていきたいですね。